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こころの金メダル

こころの金メダル

「コップの水」の話

 
「コップの水の話」  ~学年集会で~


 中学校では、学年集会を頻繁に持ちます。何か事が起こった時はもちろんのこと、特別になくても、学年全体が集まって話を聴くという時間を大切にしています。ここでは、その学年集会で話した内容を紹介します。



【時 期】

 中学校1年生の11月。



【きっかけ】



 学校生活にも完全に慣れて、いろんなことに緊張感がなくなってくる時期である。

体育大会も終わり、中間テストも済んで、気持ちにポカッと穴が開いてきていた。

 授業中の姿勢も少しずつ崩れてきている。

そして、なんと言っても多いのが、些細な事が原因で起こるトラブル。

カッとなってつかみ合いになったりというケンカや、言葉キツク相手を攻撃するということが頻繁に起こっていた。

 そこで学年会議でそのことが話題になり、ここらで1つクギをさしておこうということになった。




【展 開】

 11月の初旬。視聴覚室(1年生全員=170名が入って、ちょうどいいぐらいの広さの部屋)に全員が集合しました。

 全員が静かになった時点で私はまず、「今、1学期と違ってきているのは何か?」と全体にききました。

みんなはシーンとして考えていますが、答えは出てきません。

「一番はしっこの列の者、カベに背中をもたれさせて座っているやろ、それは人の話を聴く姿勢とは違うやろ、1学期に宿泊に行った時は、そんな姿勢の者は1人もいてなかったで」


 まず、「緊張感がなくなってきている」ということに気づかせたかったから、こういう切り出し方をしました。

両サイドの者はサッと座り直しました。



 さあ、ここからが本番だ!


 おもむろに、ペットボトル(中には水が入っている)を取り出しました。

みんなの視線はそこに釘付けになる(何をするんやろ?という感じ)


「ふ」
 
「これ、何やと思う?ただの水やで(と言って、一口飲んでみる)別に今からマリックみたいに、この水を消してしまうとかをするわけやない(笑)」


 みんなはシーンとして聴いている。


 次に、そのペットボトルの水を用意してきたコップに注いでいく。

ゆっくりゆっくりと注いでいって、いっぱいいっぱいまでいってから一瞬止めて、そこからさらに注いでいく。

 当然、水はコップからあふれて、床にこぼれ落ちた。



「ふ」

「これ、何かわかるか?これは、今のみんなの『こころ』の状態と一緒やないのかな?限界を超えてあふれ出る、あふれたら床を汚してしまう。あふれるということは『我慢の線を越える』というのと同じことやないのかな。もうちょっと我慢できるはずやのに、すぐに我慢の線を越えてあふれさせてしまう」


「あふれるということは、どういうことかわかるな、A(自分のクラスの男子)、どういうことや?」


A「ケンカになる」



「ふ」

「そうやなぁ、ようわかってるなぁ、ケンカやトラブルになることやな、最近、ものすごく多いんと違うか?別に怒っているわけやない、みんなに一度考えてほしいんや、自分のこころの中のコップの水は、すぐにあふれて出るんとちがうか?どうや?」

 と言ってから、コップにいっぱいっぱいに入っている水を、その場で少し飲んで、8分目ぐらいのちょうどいいところで止める。



「ふ」

「な、これぐらいが、ちょうどいいんやないかな。どんなことでも、ちょうどいいぐらいっていうのがあると思うねんな。人とのつき合いでもそうやで、いつも心の中のコップを意識していかんなあかんのとちがうかな?」





【教室に】

 この後、教室に「コップの水はあふれてませんか?」という掲示物を作って貼ったことは言うまでもありません。




【生徒の感想=クラスニュースに書いていたもの】



こないだの学年集会の時、「ふ」先生が「コップの水の話」をした。

そしてみんなは、自分の態度がどうなのかを考えてみた。

4月よりかは、確実に悪くなっている。

「ふ」先生の話を聴いた後、少しだけみんなの態度が良くなった。





【感 想】

 170名は、最後までシーンとして聴いてくれました。

どれぐらい伝わったかはわからないですが、

「ケンカしたらあかんぞ」とひと言言うよりかは(気持ちに)入ったんではないかと思います。

 この後、ケンカがすぐに完全になくなるかというと、決してそんなことはありません(それでなくなるなら、こんな楽な商売はありません)

ただ、生徒が、ちょっとだけでも「自分のこころの中のコップの水はどうかな?」と考えてくれたら、それでOKです。

その積み重ねなんですね。




【喜 び】

 1つうれしかったのは、

この話から1ヶ月ぐらい後で(12月中頃)2組で男子2人が社会の時間に教室でこぜりあいをして(たいしたことではないが)いるという連絡が入り、

「ふ」が職員室から行って、2人を廊下に出した瞬間に、ヤンチャ系の男子が真剣な顔で、「先生、オレ、コップの水あふれてしもた」と言ったことです。

「あぁ、入ってたんや」と、うれしく思いました。

と同時に「ええヤツらやなぁ」と改めて思いました。

「教師辞めないでよかった」と思う瞬間です。

 こういうことの積み重ねなんやなぁと思います。




【反 省】

 こういう偉そうなことを言っている自分が、すぐにコップの水をあふれさせてしまうんです。

「あかんなぁ」って思いながらも、ついつい言ってしまったりするんです。

自分の「にんげん」の未熟なところです。

「未熟である」ということを理解しながら、周囲の人と接していけたらいいなと思っています。




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